「上海」「戦ふ兵隊」など戦時中に厭戦的な記録映画をつくり治安維持法で拘束されたという経歴を持つ亀井文夫の劇映画第2作目。戦後の労働運動の高揚期につくられ、女性の労働問題を見据えた力作である。印刷工場に働く陽子は早く母をなくし、病気の父と幼い弟妹を支えている。同僚で恋人の周平と結婚するが、彼女は実家に送金するため働き続けなければならない。折しも工場では機械導入のため人員整理が行われようとしていた……。亀井の演出は論理的かつ簡潔であり、労働運動が勝利していくさまを、家庭内の封建制との対立を織りまぜながら冷静に描いている。記録映画のみが称賛されがちな亀井の佳作。
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